人间失格+斜阳(完整未删节版)

最新书摘:
  • Lysiane_
    2019-04-18
      「あのひとのお父さんが悪いのですよ」  何気なさそうに、そう言った。  「私たちの知っている葉ちゃんは、とても素直で、よく気がきいて、あれでお酒さえ飲まなければ、いいえ、飲んでも、……神様みたいないい子でした」
  • Lysiane_
    2019-04-18
      いまは自分には、幸福も不幸もありません。  ただ、一さいは過ぎて行きます。  自分がいままで阿鼻叫喚で生きて来た所謂「人間」の世界に於いて、たった一つ、真理らしく思われたのは、それだけでした。  ただ、一さいは過ぎて行きます。  自分はことし、二十七になります。白髪がめっきりふえたので、たいていの人から、四十以上に見られます。
  • Lysiane_
    2019-04-18
      神に問う。無抵抗は罪なりや?  堀木のあの不思議な美しい微笑に自分は泣き、判断も抵抗も忘れて自動車に乗り、そうしてここに連れて来られて、狂人という事になりました。いまに、ここから出ても、自分はやっぱり狂人、いや、癈人(はいじん)という刻印を額に打たれる事でしょう。  人間、失格。  もはや、自分は、完全に、人間で無くなりました。
  • Lysiane_
    2019-04-18
      自分には、どうしても、正面切っての議論が出来ません。焼酎の陰鬱な酔いのために刻一刻、気持が険しくなって来るのを懸命に抑えて、ほとんど独りごとのようにして言いました。  「しかし、牢屋(ろうや)にいれられる事だけが罪じゃないんだ。罪のアントがわかれば、罪の実体もつかめるような気がするんだけど、……神、……救い、……愛、……光、……しかし、神にはサタンというアントがあるし、救いのアントは苦悩だろうし、愛には憎しみ、光には闇というアントがあり、善には悪、罪と祈り、罪と悔い、罪と告白、罪と、……嗚呼(ああ)、みんなシノニムだ、罪の対語は何だ」  ......  罪と罰。ドストイエフスキイ。ちらとそれが、頭脳の片隅をかすめて通り、はっと思いました。もしも、あのドスト氏が、罪と罰をシノニムと考えず、アントニムとして置き並べたものとしたら? 罪と罰、絶対に相通ぜざるもの、氷炭相容(あいい)れざるもの。罪と罰をアントとして考えたドストの青みどろ、腐った池、乱麻の奥底の、……ああ、わかりかけた、いや、まだ、……などと頭脳に走馬燈がくるくる廻っていた時に、  「おい! とんだ、そら豆だ。来い!」
  • Lysiane_
    2019-04-17
      恥の多い生涯を送って来ました。